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介護業界の採用は「ガラパゴス」? 他業界からもヒントを得よう(WEB版2025年を生き残る採用セミナー⑧)

2019/02/14

「地域」の担い手を育成する、日本初の本格的な介護経営情報誌「地域介護経営」(発行:株式会社日本医療企画)にて、Join for Kaigo取締役 野沢 悠介が「2025年を生き残る採用セミナー」を掲載頂いておりました。(連載終了。現在は引き続き、「介護経営に生かせる人事の目線」を連載中。)

介護事業所の採用活動において、大切にすべき視点や、実践例を全12回にわたって紹介させて頂いています。
本サイトでも、WEB版として加筆・修正の上、連載内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

□採用手法は年々進化している。

本連載でも繰り返し述べていますが、現在の採用市場は「超売り手市場」。良い人材を採用することは各業界共通の課題であり、採用市場全体に目を向けると、さまざまな手法が生み出され、ものすごいスピードで広がっていくことに驚かされます。

一方で、介護領域においては、そういったトレンドはあまり知られておらず、採用活動が「ガラパゴス化」していると感じることも……。介護業界には、未経験で異分野からの参入も一定数ありますが、年間で約13万人の人材が業界外へ流出しているというデータもあります。

もちろん、これは採用のみの課題ではなく、待遇改善や職場環境の整備、人材育成といった施策と連動して行うべきものではありますが、他業種の採用活動が進歩する一方で、介護業界がその流れから取り残されていくことが続けば、介護業界の人材確保がますます難しくなることは想像に難くありません。

採用難の時代だからこそ、同業はもちろんのこと、採用市場におけるトレンドを意識することは、とても重要です。今回は他業界の採用の最前線について触れてみます。

■マスアプローチからパーソナルアプローチの時代へ

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スマートフォンの普及は私たちのライフスタイルを大きく変化させ、いつでも・どこでも自分の好きな情報にアクセスすることを可能にしました。その結果、私たちの行動はより多様になり、多くの人に一律に届けようとするマスアプローチよりも、よりターゲットを絞ったパーソナルアプローチが効果が上がるようになりました。

また、採用市場においても「働き方改革」やワークライフバランスへの関心の高まり、「人生100年時代」における柔軟なキャリアデザインへの意識が広まる中で、個人の仕事観も大きく変容し、仕事・職場に求めるものも多種多様になっています。働き方が多様化していく時代に、単純なマスアプローチをするだけでは、求職者に関心を持ってもらうことが、今後ますます難しくなっていくでしょう。

以前にも、「採用ターゲットの明確化」の重要性を述べましたが、採用の場面でもターゲットを明確化したうえで、「いかに自社の情報を効果的に届けるか」というリーチする手法についてさまざまなアイデアが実践されています。

□ターゲットを絞ったPR戦略

最近は、オウンドメディアと呼ばれるWebメディアをつくり、社員のインタビューやオフィス・社内制度の紹介など、ターゲット層に合わせた情報を発信し、自社認知度の拡大やファン獲得を行い、結果として採用につなげている企業も増えています。

【オウンドメディアの例】

メルカリの「はたらく」を伝える mercan(株式会社メルカリ)

新しい価値を産み出すチームのメディア サイボウズ式(サイボウズ株式会社)

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オウンドメディアの特徴は、ダイレクトな求人情報を発信している訳ではない点にあります。

今すぐ転職を考えていない人でも、求人情報には興味がなくとも、面白い記事やためになるイベントには興味を示し、その人がSNSでシェアをすることで、ターゲットとなる層の間でリーチが広がっていき、転職を検討する際には第一想起される存在となっている……。

一見遠回りに見えますが、マスにアプローチするよりも、結果として低いコストで良い人材の採用につながるケースも多くあります。また、直接的な採用活動ではなく、ターゲットにとって魅力的な勉強会・交流会などを開催する企業も増えています。

しっかりとオウンドメディアをつくり、継続していくことはコスト面・パワー面双方でなかなか難しいと思いますが、情報発信の手法として取り入れることが出来る部分があるかもしれません。

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■中長期的な採用候補を自らつくる

弊社でも先日求人を行った際は、ターゲット層を絞ったSNSでの発信のみでゼロ円での採用に成功しています。ポイントはターゲットがどのような行動をとり、どのような情報であれば関心をもつかを分析し、中長期的に採用候補も含めたファン層のコミュニティを形成するという点かと思います。

私自身、他業界の採用からの学び・気づきを得ることが多く、常に最新の動向を取り入れたいと考えています。「介護業界だから、採用できないのは仕方ない」と諦めるのではなく、他業界の成功事例を学ぶことで、採用成功につながるヒントも見つかるかもしれません。

※本記事は、「地域介護経営 2018年8月号(2018年7月20日発行 No.182)」にて掲載されたものです。(一部加筆をしています。)

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【バックナンバー】

Vol.1 厳しい時代だからこそ、「採用力」を鍛えよう!

Vol.2 採用活動成功の第一歩。「人材要件の定義」を考える。

Vol.3 採用のツボ-募集編-「何となく募集」をやめよう

Vol.4 採用活動に必要なコミュニケーションのポイントは?

Vol.5 「入社する1社」に選ばれるポイントは?

Vol.6 採用活動は最上の学びの場? 「全社一丸採用活動」のススメ

Vol.7 人材採用につながる学校とのかかわり方とは?

【この記事を書いた人】

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野沢 悠介 株式会社Join for Kaigo(現:Blanket)取締役

立教大学コミュニティ福祉学部卒業。
大手介護事業会社にて新卒採用担当・産学共同プログラム担当・採用部門責任者等を担当し、年間400~500名規模の介護職新卒採用スキームを構築。
2017年 株式会社Join for Kaigo(現:Blanket)取締役就任し、介護領域全体の人材確保・定着力の向上を目指す。主な実践領域は、コミュニケーション・キャリアデザイン・リーダーシップ・チームビルディング・目標設定等。